Interview
古山真里江 首席オーボエ奏者

2013年12月より神奈川フィルの首席オーボエ奏者として、活躍する古山真里江。音楽と真摯に向き合う姿勢、そして伸びのあるオーボエの音色に魅了されるファンは多い。今年7月4日の音楽堂シリーズでは、ハイドンの協奏交響曲で初の神奈川フィルとの協演を控えており、期待する聴衆も多いはずだ。
Sonorite #306 取材・文/田賀浩一朗

日本の三名城のひとつ、大阪城が見渡せる絶好の地で育った古山真里江には、幼い頃から楽しみにしていることがあった。毎年夏、大阪城公園で行われる“たそがれコンサート”(大阪市音楽団主催)は、音楽好きな家族と一緒に特別な時間を過ごす大切な場所。紅く染まった大阪の空に響きわたるブラスの音は、少女の心に深く刻まれ、その後の音楽人生でも大きな印象を残すコンサートの一つとなった。『吹奏楽という言葉をこのコンサートで知りましたし、中学校から吹奏楽部に入るきっかけにもなりました。公園の広々とした空間で聴くコンサートは、いまでも鮮明に覚えています。』

神奈川フィルの首席オーボエ奏者として一昨年よりオーケストラの表舞台で活躍している古山が、オーボエを始めるきっかけとなったのは、叔父から譲り受けた20年以上前の楽器との出逢いだった。

『中学の吹奏楽部では、花形であるフルートやほかのパートへの憧れもありましたが、楽器が身近にあったことや3年の先輩がすごくうまくて『これがオーボエやで』って教えてくれたんです。素敵な音色だったのでオーボエを選びました。』

高校生の時、頭の片隅には音楽家への夢と同時に職業として教師への憧れもあったという。『高校が吹奏楽の盛んな学校で、勉強も同じくらいやらなきゃいけない学校だったので、音楽と勉強を両立できる環境にあって今しかできないことをやろうと思ったんです。』

様々な葛藤がありながら、徐々に音楽家への道を目指しているとき、現役のオーケストラ・プレーヤー古部賢一氏との出逢いが、オーケストラへの道を一層決定づけたという。『先生みたいなオーケストラ奏者になりたい。』そう強く思う気持ちは、今に繋がり、夢は現実のものとなったことは、今日のステージを見ても明らかだ。

大阪弁を使いながら話す屈託のない笑顔、朗らかな雰囲気とは裏腹に、実は苦労人でもある。全国でも指折りの名門校・大阪桐蔭高校在学中、周囲の友人も出場していた憧れのコンクールに挑戦。受験の準備や今の実力を知るため2度チャレンジしたが、いずれも満足のいく結果は得られなかった。しかし、その後受けた管打楽器コンクールでは見事第2位を受賞。『挫折があったから、なにくそ!っていう精神で練習に打ち込めたし、管打の本選ではかえって楽しんでやれました。本当にうれしかった。』高校在学中に厳しい部活動で育まれた『一生懸命やったらこんなに素晴らしいものができる』気持ちやその感動を胸に、その後も厳しい練習を続けられているのだろう。

そんな、彼女がプロのオーケストラ・プレーヤーになって嬉しいことは、演奏でお客様に満足してもらうことや、直接声をかけてくれること以外にも『プロの奏者たちに囲まれて演奏できる喜びは、今までなかったこと。憧れの空間に身をおいて、響きを全身で感じられること』だという。支えてくれる神奈川フィルの楽員とは、コミュニケーションをとる時間が多く、様々なことを受け入れてもらっていると話す。『先輩が多い楽団員のみなさんからのご指導はもちろんですが、私より神奈川フィルのことをよくご存知のお客様からも、いろいろな助言をいただきたいと思っています。』

生活の大事な一部となっている余暇の過ごし方は古山流。『一日練習しない日は大事に過ごしています。映画を観たり湘南の海辺を散歩したりして、体をリセットします。』オン・オフのスイッチをうまくコントロールするのが、笑顔を絶やさない秘訣のように思えた。